ヒバツナ生活 ●　寒い夜だから

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●　寒い夜だから

2008-12-03 20:08

「しばらくこうしてていい？」
「え、あ、はい…///」

明日は飲み会があります。歓迎会・送迎会・忘年会をいっぺんに済ませようという、なんとも経済的な内容です。でもその場所が家とは反対方向なので帰るのが遅くなりそう＞＜；次の日は普通に仕事なのに！

＊＊＊＊

ヒバリさんと付き合うようになって始めて迎える冬の季節。
日に日に寒くなってきたせいか吐いた息が白くてますます寒さを実感させられる。
隣を歩く恋人に視線を向ければ、またあの感情を生み出してしまう。
寒いと人肌が恋しくなるって本当だ。

最近、それなりにスキンシップをしてきたヒバリさんの態度が少し変に感じてしまう時がある。
応接室や俺の部屋にいるときは普通に抱きしめてくれたり、触れ合うのは当たり前になってる。
でもこうやって外をふたりでいる時は距離を置かれている気がする。
ヒバリさんに限って人目を気にするなんて考えにくいし。
それに夏頃までは手を繋いで歩いた事だってあった。

―最後に手を繋いだのはいつだろう。

綱吉は記憶を手繰り寄せてみる。
たぶん、俺の誕生日の次の週にヒバリさんと紅葉狩りに行ったときかな。
そういえば、あの頃からもう肌寒い風が吹き始めていた。
その時にヒバリさんの気に触るようなこと言ったのかな。
う～ん………。ダメだ、いくら考えても思いつかない。

「綱吉、前」
「え？…っわ!?」

ヒバリさんの声を聞いたと同時に腕を引っ張られた。

「ちゃんと前見て歩きなよ」
「す、すいません…」

俺は深く考え込んでしまったらしく目の前に迫ってる電信柱に危うく頭突きをするところだった。

「どうしたの、ぼーっとして」
「いえ、別に…」
「…そう」

今の気持ちを正直に言っていいのか迷ったあげく曖昧に答えることしか出来なかった。
でも俺たち付き合ってもう半年になる。キスだって今も変わりなくしてくれる。
だったら手を繋ぐぐらいは許されてもいいと思う。そう思いたい。

「ヒバリさん」
「なに？」
「あ、あの！手、繋ぎませんか…？」
「……」
「ヒバリ、さん…？」
「……いいよ」

よかった、断られなくて。でも少しだけ間があったのは何でだろう。

その僅かな引っ掛かりを振り払うかのように自分の手を差し出しヒバリさんの手に添える。学校からこの寒空の中ずっと歩いてきたせいかヒバリさんの手は氷のように冷たかった。でもそんなの気にしない。こうやって以前と同じように手を繋げただけで上機嫌になれたから。

だけど、再び歩き出してまたあの違和感が舞い戻ってきた。

話しの続きを始めて会話をするヒバリさんは凛とした雰囲気は変わらないのに
いつまで経っても俺の手を握り返してはくれなかった。
それはまるで俺がヒバリさんの手を掴んでいるだけだった。

ちゃんと隣にはヒバリさんがいるのにこんなにも遠くに感じる。
淋しさと虚しさばかりが募っていった。

***

それから数分後、気づけば自宅まで数メートルの距離まで来ていた。
別れることがほっとしたのは今日が初めてだった。

掴んでいた手を離し、顔を上げる。そして”また明日”って笑って言えば大丈夫。
―だと思ったのに。

頭を上げヒバリさんを見上げたその時。
手を離した瞬間、ほっとした表情のヒバリさんがいた。
その時、冷たい風が体の中を吹き抜けていく感覚に陥る。

どうしてそんな顔するの。

胸の痛みは徐々に不信感に変わりだしていく。
そもそも俺とヒバリさんとは温度差があるんだろうか。
もしくはもう俺の事なんて…

「それじゃ、また明日ね」
「………」
「綱吉？」
「………」
「ねぇ、もう君の家についたよ」
「ヒバリさんは……」
「…？」
「俺のこと、もう好きじゃないんですか？」
「綱吉？どうしたの急に」
「たっだって、俺の手、握ってくれなかった、から…」
「ああ…」
「やっぱり触るのも嫌になったんですか…？」
「違う。そういう意味じゃない」
「それならどうして…」
「冷たいから、」
「え？」
「僕は君と違って体温が低いんだよ。だから…」
「…だから？」

「こんなに寒いのにわざわざ冷たい手なんて触りたくないだろ」

「…へ？それだけ…？?俺そんなの全然気にしないのに」
「君がそうでも僕がいやなんだよ」
「俺、普通の人より体温が高いそうなんです。だからヒバリさんと足して割ったら丁度いいじゃないですか？」
「そうなのかな。よく分からないけど、でも君が嫌じゃないなら僕だって君に触れたいよ」
「いっ嫌なわけないじゃないですか！それに繋いでくれないほうが俺はもっといやです。」
「そうなの？」
「はい！だから明日は俺の手、ちゃんと握ってくださいね」
「うん。」

再び距離を縮めたふたりを冬の夜空の瞬きは静かに見守っていた。

＜END＞

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