追いかけたあの人はすぐに見つかった。というか戻ってきていたというのが正しいのかもしれない。
「あ、あのっ…!」
「君は、」
「車の鍵、届けにきました。あなたのですよね…?」
「うん。ありがとう」
「いえ、それじゃオレはこれで、ぅわっ!?」
「そんなに急いで戻らなくてもいいだろ」
「え、ちょっ…!ヒバリさ、」
「なんで離れようとするの?」
「なんでってオレたち男同士ですよ!?」
「別に僕は気にしないけど」
「オレが気にします!なんなんですかイキナリ」
「君、名前なんていうの?」
「お願いですからオレと会話してください」
「名前は?」
「~~~っ!さ、沢田、綱吉です」
「沢田。君のアドレス教えてよ」
「はい?」
「携帯くらい持ってるだろ」
「持ってますけど…」
「じゃあ教えてくれたら解放してあげる」
「えっと…オレの携帯テーブルの上にあるんですけど…」
「今もってないこと?」
「はい…」
「そう。だったら赤ん坊は僕のアドレス知ってるから彼から聞いて」
「赤ん坊ってリボーンのことですか?」
「うん。あと登録したらすぐに僕にメールして」
「あ、はい…」
「今日中にメールしないと君の会社とは今後一切関わらないからそのつもりでね」
「え!?そんな…それじゃまるで脅し…」
「なにか言った?」
「何でもありませんっ!!」
「そう。それじゃ、またね。おやすみ」
「おやすみ、なさい…」
やっと解放された体に雲雀さんの温もりが残っていた。ドキドキと脈打つ心臓が痛くて、うまく息ができない。オレはその場にしゃがみこんで真っ赤になった頬を両手で押さえつけた。
おかしいな。今日は一滴もお酒飲んでないのに。こんなにも体が熱くなるなんて。
これじゃまるでオレがヒバリさんのこと好きみたいじゃないか。
このあと雲雀さんから言われた通りリボーンからアドレスを教えてもらってメールを送った。この一通は会社の運営を大きく左右するものだから慎重に、無難な内容で。
そんなオレを見てリボーンはニヤニヤして「雲雀のやつ手が早いな」と訳の分からないことを言っていた。
明日からあの人と同じ職場だなんて色んな意味で緊張する。どうか何も起こりませんように。オレは普通に社会人として働きたいんだ。
たぶんそれは雲雀さんしだいなんだろうけど…悪い人ではないようだから仲良くできたらいいなと思う。
そんなオレの淡い期待はこの後すぐに打ち砕かれることになる。
***
雲雀さんとリボーンは10年来の知り合いだったりします。
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