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中学の頃に雲雀さんのことをを好きだと気づいて遠くから見ているだけだったツナは自分の気持ちを絶対に口にしないようにします。告白なんてしても意味がないし、気持ち悪いと思われるのは嫌だからです。
でも、いつもぽやーっと熱烈視線で雲雀さんを見ているのでモトバレです。ある日、ディーノさんに「恭弥のこと好きなんだろ?なんで告白しないんだ?」と言われてしまいます。
ツナとしてはバレていないつもりだったので慌てて否定します。「べっ別にオレは雲雀さんのことなんか好きじゃないですよ!」と。そこでよくある漫画のタイミングで後ろに雲雀さんが立っていました。驚きすぎて言葉が出ません。そんなツナに「僕だって君のこと好きじゃないよ。弱いし咬み殺す価値もない」と冷たく言い放ちます。
それが雲雀さんと交わした最後の会話でした。それからツナは高校へは進まずイタリアへ行きます。マフィアになるなんて嫌だけどみんなを守るためにはそうするしか道はないからです。というのは失恋の傷を誤魔化すための自分への理由です。本当の理由は雲雀さんと会わないようにするためにするためです。
それでも雲のリングは回収できませんでした。完全に雲雀さんとの関係を断つことができなかったのです。
―10年後。ツナはマフィアのボスになっていました。雲雀さんはまだ雲の守護者です。あれから事務的な連絡は全て草壁さんを通じて交しています。ふたりは仕事の関係だけで繋がっていたのでした。
それでもツナは十分でした。これくらいの距離がいいからです。でも時々、中学の頃の夢を見ています。廊下ですれ違って目があったり、少しだけ会話をしたりといったなんてことない夢です。それでも起きたときには決まって泣いていました。ツナはまだ、雲雀さんのことが好きなのでした。
そんなある日。マフィアが集まるパーティーに行くことになりました。お酒には慣れてきているツナですが付き合いで断れないお酌もあり少しだけ飲みすぎていました。ちょっとだけ夜風に当たりに会場を抜け出してテラスで休んでいました。なんとなく庭の方を見てみるとそこにはスーツ姿の男の人が歩いていました。よく見るとそれは雲雀さんでした。約10年ぶりに見た雲雀さんは髪が短くなっていて背も山本くらい高くなっていました。
ツナは無意識にテラスの柵まで行き、雲雀さんを見ていました。ところが酔っているせいでバランス感覚が鈍り、下に落ちてしまいます。運よく植え込みに落ちたので幸いかすり傷程度で済みました。
服についた葉っぱを払いながら立ち上がりますが、また倒れそうになります。でも今度は痛みがありません。それよりも温かい何かに包まれているようです。
「なんなの君」
「………え?」
「服が汚れる。離れなよ」
「うわっ!?痛っ!」
なんと雲雀さんに抱きついていたのでした。でもすぐに突き飛ばされてしまいました。
雲雀さんはそれ以上何も言わずに部屋の中へ入っていきます。遠くで獄寺君が呼んでいたので追いかけたい気持ちを抑えて会場へ戻ります。追いかけたところで何かが変わるわけでもないのにと思いながら。
すると、会場の端に雲雀さんが一人で立っていました。今まで一度だってツナの前にもボンゴレの集まりにも来なかった人がどうしているのかというとリボーンが呼んだようです。なにか重大発表があるからと。
パーティーも終盤に差し掛かったところで突然、電気が消えます。敵の襲撃かと殺気立つ会場。そんな中、一人の人物にライトが当たります。それはツナです。そしてリボーンがありえないことを言い出しました。今夜はボンゴレ10代目の婚約発表があると。ツナは生まれてこの方だれとも付き合ったことがありません。お見合いも全て断っているし婚約者なんていません。ツナはいつの間にか壇上にいて隣には見たことのない可愛い女の子が腕を組んでいます。その場で騒いではいけないと思い、とりあえず肯定も否定をしないまま別室へ移動しました。
これがどういうことなのか説明をしてもらわなくてはいけません。リボーンが言うには「お前もいい歳だろ。ボンゴレのためにも身を固めやがれ。まぁ俺みたいに愛人を作るなんて器用なことはできねぇだろうから婚約者で手を打ってやる」だそうです。
いくらボンゴレのためでも好きでもない女の子と結婚するなんてことはできません。いくらリボーンの言うことでもそれは聞くことができないと反論しようとした時です。後ろから声がしました。
「なんだ、本当だったんだ」
「ひばり、さん…」
「君みたいのでも結婚してくれる女がいたんだね」
「ち、ちがっ…!」
「おめでとう」
お祝いの言葉。それは自分に向けられたもの。頭では分かっているのに、どこか他人事のように感じています。雲雀さんが他人を祝ったりするなんてありえないし、まして好きでもない自分を祝福してくれるなんてありえないのです。
「いきなり婚約発表するなんて跡継ぎでもできた?これでボンゴレも安泰だね」
「子供なんてできてません…!だいいちオレは結婚なんて!」
雲雀さんはツナの言うことを全く聞かずリボーンとばかり話をしています。ツナは一人り残され、好きな人に祝いの言葉を言われて今にも泣き出しそうです。しばらく堪えていましたがツナも我慢の限界です。足元だけをみて部屋を出ていきます。心の整理がつかないツナは会場でヤケ酒を飲んで完全に酔いつぶれてしまします。
ガンガンと頭の痛みで目を開けるとそこはベッドでした。そして、雲雀さんが顔を覗き込んでいます。お酒のせいで喉を傷めてうまく声がでません。でもさっきみた雲雀さんとは雰囲気が違います。どこか悲しそうな表情です。
「君に会うのはこれで最後にするから。」
「…ひば、り…さ…」
「幸せになるんだよ。君は笑っている方がいい」
「まっ、まって…」
「リングはそこのテーブルに置いてるから」
「なんで…あれは、ヒバリさんのです…」
「僕にはもう必要ないものだ」
「そんな、こと言わないでください…っ!雲の守護者はヒバリさん以外考えられません。それにそれが無かったらオレ…」
「僕がいなくても誰かが代わりを務めるよ」
「ヒバリさんが、好きなんです」
「ありえない。だって君は中学の頃…」
「だってヒバリさんに嫌われたくなかったから…オレの本当の気持ち知ったら絶対気持ち悪いって思うに決まってる」
「そう、だったんだ」
「じゃあ、僕は君のそばにいてもいい?」
「そばに、いてくれるんですか…?」
「ただし、婚約は破棄してもらう」
「?」
「恋人に婚約者がいたんじゃ僕が浮気相手みたいだろ。そもそも君は僕のものだ」
「浮気って…」
「お互い好きなら付き合うのが一般的なんだろ?」
「付き合う、って!?」
「僕も君が好きだ。」
「えっ!!?」
「何か問題でもあるかい?」
「な、ないですっ///」
こうして10年越しの恋は叶ったのでした。婚約発表の時にいた女の子はリボーンが用意したアルバイトみたいなものです。10年経ったもくっつかない二人にしびれを切らして一芝居打ったのです。
うわーもうこんな時間だ。とりあえず、ハッピーエンドになったのでおしまーい!
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