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web拍手・日記コメントへのお返事はこちらでさせていただきます。※突発的にエロもあるかも。
◆サクラサクミライコイユメ - 雲雀Side
4月8日(木)
明日の商談の資料をまとめていると、社内回覧が回ってきた。
もう、そんな時期か。入社式を1週間前に終えて僕は新人の教育係になっていた。
手のかかる新人は僕の仕事のペースを遅らせては何度も謝っている。
もうその光景も見飽きたけど。
今までの僕ならそんな新人咬み殺すところだけど、あの子に対してはなぜか許してしまう。
でも、目の前の光景は見ていてムカついてきた。
あの変態六道に花見の事をきいているようだ。
あんなやつに聞かないで僕に聞けばいいのに。
沢田綱吉は僕の唯一の後輩だ。
4月9日(金)
今日の商談が思っていたよりも長引いて会社に戻ったのは18時前だった。
殆どの社員は帰宅準備をしていた。そう、あの子も。
タイムカードを押しているあの子に声をかけた。
「日曜の花見、君を場所取り係りにしたから」
僕が、ね。
だって場所取りは新人の役目だからね。
4月10日(土)
エレベーターが開く寸前、沢田と山本武の話声が中から聞こえた。
どうやら、沢田は山本と場所取りをするようだ。
そんなの認めた覚えは無いよ。
僕は「群れたら咬み殺すよ」と沢田に告げ、エレベーターに乗り込んだ。
エレベーターが上る間にメールを送くるためにポケットから携帯を取り出した。
山本武には場所取りに行けないように商談に行ってもらおう。
沢田には花見の場所を教えておかないといけない。
あの公園全体が桜の名所となっている。
折角、場所取りをするんだから一番いい場所をとってもらわないとおもしろくないからね。
4月11日(日) 朝
天気は快晴。
4月にしては暖かすぎるくらい天気がいい。
こんな日は町を巡回するのに最適だ。
午前中は町の風紀を乱すやつらをトンファーで咬み殺して回った。
うん。デスクワークよりもこっちの方が楽しい。
特にあてなく歩いていると、並盛公園の前まで来ていた。
あの子は、いるのだろうか。
まさか、いるわけないか。
僕から場所取りを命じられてサボるとは思えないけど、まだ陽は高い。
僕は踵を返して商店街へと向かった。
まだ咬み殺し足りなくて身体がウズウズしている。
公園にはまたあとで来ればいい。
会社の奴らが来る前に様子くらいは見に来てあげるよ。
4月11日(日) 夕方
太陽が傾きかけた頃。
そろそろ沢田がいるかもしれないと思って公園に行ってみた。
予想通り、桜の木の下。青いシートを敷き、茶色の髪が揺れていた。
褒めてあげようと近づいたら、様子がおかしいことに気づいた。
もしかして、この子寝てる?
全く、昼寝なんていい度胸だ。
でも、声をかけると弱弱しい反応だった。
どうしたんだろう。単に寝ぼけてるようには見えなかった。
一度目を開けた沢田はぐったりとした様子で再び目を閉じた。
微かに震える体とは反対に触れた体は熱を持っていた。
僕は意識を失った沢田を抱き寄せ、救急車を呼んだ。
それから3分後。
僕は沢田に付き添い、病院へと向かった。
救急車の中で救急隊員に聞いた沢田の症状にため息がもれた。
脱水症状と熱射病、あと低血糖が原因らしい。
全く、この子は自分の体調管理もできないのか。
呆れた感情とともに軽い症状でよかったと胸を撫で下ろしたときに僕は気づいた。
そうか、僕は倒れた沢田が心配だったんだ。
4月11日(日) 夜
点滴も終わり沢田の顔色もよくなった。
一人部屋のベッドで眠る沢田は社会人とは思えないほど幼い顔立ちだった。
いつもは同期のやつと笑ったり、僕に怒られてしょんぼりしている表情ばかり見ているせいか、こうやって眠っている沢田を見るのは初めてだ。折りたたみのイスに座ったまま顔を見ていたら、沢田がゆっくりと目を覚ました。
どうしてこんなことになったのが原因を聞くと、朝から場所取りをしていたかららしい。
今日は4月の上旬にしては暑すぎるほどの気温だった。
それなのに、日陰にも入らず、水分も取らない。食事もしていないなら倒れて当然だ。
救急車を呼んだことを言うと控えめに「ありがとうございます」と返って来た。
別に感謝して欲しいとは思わないけど、沢田から礼を言われるのは悪くなかった。
でも少し気恥ずかしくなって視線を窓に向けた。
この病院の敷地にも桜があるんだ。夜風がカーテンを揺らしていると後ろから名前を呼ばれた。
月の光に照らされた沢田は相変わらず華奢な身体だったけど、元気そうでよかった。
彼の笑った顔を見たら自然と頬が緩んでいた。
<後半へ>
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