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web拍手・日記コメントへのお返事はこちらでさせていただきます。※突発的にエロもあるかも。
●クリスマスなんて。6
オレはこの人を不機嫌にするのが得意らしい。
10年後の雲雀さんになら普通に話せたのに、思うように言葉が見つからない。
オレの想いが雪と一緒に溶けてしまえばいいのに。
「さっきの、何。僕に女がいるって?君、バカじゃないの?」
「……っ、」
「僕は君が好きなんだよ。だから君以外興味ない」
「だ、だから…!オレの気持ち知っててなんでそんなウソつくんですか!」
「嘘なんかじゃないよ。僕は、」
「キス、してたくせに…!!」
「なんで君がそれを知ってるの」
「やっぱり…本当だったんですね…クラスの男子が見たって言ってたんです。ヒバリさんが髪の長い女の人にキスされてたって」
「それでそいつと僕が付き合ってるって思ってるんだ」
「だって、ヒバリさんがキスさせる人なんて…」
「恋人じゃないとありえないって?」
「…はい」
「じゃあ、僕がキスした相手は恋人になるってことだよね」
「え、ちょ、んんっ!?」
頑なに僕の話を聞かない子には力づくでも思い知らせてやる。まどろっこしいことは面倒だ。全ての原因は自分にあるんだから抵抗するなんて生意気だよ。離れようとする唇を何度も捕まえる。口内に滑り込ませた舌は絡み合い、甘さを増していく。痺れるような感覚は初めてで、気持ちがいい。いっそ、このまま食べてしまいたいくらいだ。徐々に沢田に体から力が抜けていき、細い腰を支えてあげないとその場に座り込んでしまいそうだ。
最後に軽く唇に触れ、解放してあげた頃には沢田は僕の腕の中で乱れた息を整えることで精一杯のようだった。
「これで君は僕のものだね」
「はぁ…な、なんで…」
「君が言ったんだろ。こうしたら僕と付き合うことになるって」
「さいてい…」
「酷い言われようだね。言っておくけど、僕は君以外こういうことはしないから」
「君が言う僕の”彼女”は10年後の君だからね」
「え…えええぇぇ!?10年後のオレ!?」
「よく思い出してみなよ。今月の初めに商店街に行っただろ」
「そういえば…母さんから玉子買ってきてって頼まれてランボと一緒に行って…あ!あの時!!」
そうだ。自分の足を踏んで転んだランボは何を思ったのか10年バズーカを取り出して、それをオレのほうに向けた。でもあの時は書斎みたいなところに飛ばされて…どうしようかとその場をウロウロと歩き回っていたら元の世界に戻っていた。
「でもオレ、ヒバリさんに会ってません」
「入れ替わる前に僕が帰ったからだよ」
「ちょっと待ってください!オレ将来女の人になるんですか!?それとも女装が趣味になるとか!!?」
「そんなわけないでしょ。10年後の君は後ろ髪が伸びてたから女に見えたんじゃないの。身長も今の僕より少し高いくらいだったからね。いきなりキスされたときは正直驚いたけど」
「オレ、なんてことしてんのー!!?」
「僕はさっきの方がよかったけどね」
「なっ…!!」
「泣いてる顔よりも今の顔がいいね」
「あの、ひばりさん…お、おれは…」
「ん?」
「どうしたらいいですか…?」
「僕のそばにいればいいんじゃないの」
「そうじゃなくて、10年後のオレは何でヒバリさんに、き、キスなんかしたんですか…?」
「理由なんて知らないよ」
「そう、ですよね…」
「…………」
「…………」
「…ねぇ」
「は、はい!」
「僕は君のことが好きだ。10年後の君と会ってから自覚はしたけど、その前から気にはなっていたんだ。僕たちは少なからず未来を知っている。だから未来を変えようと思えば変えることができる。それが”今”だよ」
「ひばり、さん…」
「僕なら力ずくでも君を手に入れることもできる。でも、これが最後のチャンスだよ。嫌なら僕を殴ってでもいいからここから逃げ出しなよ」
「最後って…」
「僕のことが好きなら、このままキスさせて」
10年後の雲雀さんはオレたちは仕事のパートナーだと言っていた。それでもいいと思う気持ちもある。でも、ヒバリさんはオレのこと好きって言ってくれた。それに、ヒバリさんの大きな手がオレの頬を優しく撫でる。まるで壊れ物を扱うかのように。
未来が決まってるなんて保証はどこにもない。それでも、オレはヒバリさんと一緒にいたい。好きって言ってもらえるまででいいから。
「オレも、ヒバリさんのことが好きです」
2回目のキスは甘くて切ない、触れるだけのキスだった。
雪が舞う、クリスマス。それが二人で歩む始まりの日。
<END>
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