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小学校最後の冬。あの時助けて貰った人の名前も聞けないまま、でも好きな気持ちを持ったままツナは並盛中学に入学しました。するとそこには彼がいました。いえ、彼にそっくりな人がいました。その人の名前は雲雀恭弥。黒髪で学ランを羽織った彼は風紀委員長で群れを咬み殺す恐ろしい人でした。
それでもあの銀髪の人と似ているところもあってツナは雲雀さんを観察することにしました。できるだけ近づかず遠くから見つめているだけです。でも黄色い鳥に効果を教えたり、昼寝をしている姿は可愛いものです。
入学に入って半年がたった頃にはあの銀髪の人のことをあまり思い出せなくなっていました。
それはたぶん、雲雀さんのことを見すぎて記憶が上書きされていたからです。そのことに気づいたツナは雲雀さんを見ないように。話しかけられても逃げるようにしました。
その日もゴミ捨てを押し付けられて一人校舎裏を歩いていると目の前に雲雀さんがたっていました。まるで待ち伏せされているかのように。
「ねぇ。なんで僕のこと避けてるの」
「…っ、なんのことですか?」
「ほらまたそうやってしたばかり向いてる」
「お、オレ早く教室に戻らないといけないんです。そこどいてください」
「僕の質問に答えたら通してあげる」
「別に避けてなんかいません。気のせいじゃないですか?」
「気のせい?それなら僕の目を見て同じこと言ってみなよ」
「オレは忙しいです。お願いですからオレに構わないでください」
「さわだ」
「やっやめて…!」
あと数センチでツナに触れそうになった雲雀さんの手は、あっけなく空気を掴みました。ツナがしゃがんで耳を塞いでいるからです。足元に落ちたゴミ袋を気にも留めず固く目とを持て両手を耳から離しません。小さく聞こえたその声は雲雀さんを拒絶したものでした。
「これ以上あの人のこと忘れさせないで…っ。これ以上ヒバリさんと一緒にいたくない」
ツナはこの時、あの少年の顔も声もほとんど覚えていないのでした。
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