<今回は雲雀さん視点です・犬/夜/叉設定はどこへやら。捏造多めです。>
いきなりだけど、僕は吸血鬼と人間のハーフだ。といっても目立つような牙もないし、日光が弱点というわけではない。していえば、普通の人間よりも肉体的能力が上というくらいか。
でも、吸血の血が濃くなる日がある。それは月が見えない朔の日。この日だけは見た目も少しだけ変わる。父親の髪の色になってしまうことくらいか。あとは吸血本能は僕に備わっていないらしく、その分、咬み殺したくなる衝動がいつもより増すくらいだ。
父親はいまどこにいるか分からない。生きてはいるんだろうけどね。母親は僕を生んですぐになくなったらしい。だから家族というものを知らないまま生きてきた僕は群れる意味が分からないままでいた。
彼が入学してくるまでは。
沢田綱吉。彼は不思議な子だった。つい最近までは変わった子、だった。
遅刻常習犯からよく転ぶ子。それから何もないところで転ぶ子だなと印象が変わっていった。今ではたまに挨拶を交したり雑用を頼むようになった。
僕の性格上、怖がられていても嫌われているとまでは思っていなかった。それなのに、
「これ以上あの人のこと忘れさせないで…っ。これ以上ヒバリさんと一緒にいたくない」
泣きながらうずくまる沢田を見下ろして、声をかけようとすると耳を塞いでいた手に力を入れらてて会話すらできない状況になってしまった。
僕は沢田に拒絶された。顔も見たくない。声も聴きたくない。
その理由よりも”あの人”が誰なのか知りたかった。
モヤモヤとしたまま応接室に戻ると誰かがソファーに座っていた。見慣れた後姿。最後の記憶と同じ彼は、
「勝手に入らないでくれる」
「久しぶりの親子の再会でそのセリフはないんじゃない?」
「放浪癖の親に言われたくないんだけど」
「僕がいない間、寂しかったかい?」
「は?寝言は寝ていいなよ」
「トンファーなんていつから使うようになったんだい」
「あなたに教える義理はないよ。それより早く出て行ってくれる」
本当にイライラする。
数年ぶりに帰ってきた父親の態度にムカついたのもあるけど、沢田に泣かれたくらいでこんなにも動揺している自分がいることを認めたくなくてテーブルに八つ当たりした。
こんなことしている間にも沢田は今もまだ泣いているのかな。
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