それはツナが小学生の時、2月に入ったばかりの日曜日のことでした。
その日は月が出ない朔の日。友達隣町まで遊びに行った帰り、電車に乗り遅れて帰りが遅くなってしまいました。家には連絡をしているので大丈夫ですが、あたりはすっかり暗くなって一人で家まで歩くツナは早足になっていました。不思議なことに誰ともすれ違わず、民家も静まり返っていました。それがますます恐怖心を煽り吐きそうになりながらツナは家へと向かいました。
すると、路地の向こう側から人の声がします。それと同時に何かが倒れる音がします。ツナはそっと近づきその現場を覗き込みました。目の前には数人の不良が倒れていてその中心に銀色に輝く髪の少年が立っていました。後ろ姿ですが凛とした空気を身にまとっていて見とれてしまったツナは後ろからから近づく人の気配に気づきませんでした。
イキナリ体が浮いたと思ったら首筋にひやりとしたものが押し付けられていました。何が何だか分かりませんでしたが今、自分の首にあてられているのは小さめのナイフでした。
「あんまり調子に乗るんじゃyねーぞ。こいつがどうなってもいいのか」
「なんだまだ雑魚がいたんだ」
「おい!それ以上近づくとこのガキが怪我するぜ」
「そんなの僕に関係ないよ」
「お、おい…っマジかよ」
「目、閉じてて」
「えっ」
「うあっ!!」
銀髪の少年がゆらりと体を倒したと思ったら小さな声でそう言われました。ツナは怖い気持ちもあってぎゅっと目を瞑りました。次の瞬間、バキッという音がして温かいなにかに包まれていました。
抱きしめられたまま見上げるとふわりと笑う少年がいました。
月明かりが無いその日、星の光を背にした少年にツナは恋をしました。
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[1回]
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